探しもの
探しもの


*


落としてしまった欠片を必死に探す少年が居た。
大人と子供の間を迷う
不安定な子。

不安定。

不可解でならない。
不感する言葉。
しかしその響きに安定を感じる私は何なのだろう。

少年は高層化したビルティングの隙間から
眠らぬ雑音の巣窟を通り、
熱気すらも遠く忘れる街はずれ。
雑木林の奥まで流れた。

「しくし、く、しんしく。」

少年の口から零れる小さな言葉。
泣いているのだろうか。
寂しんでいるのだろうか。
口から零れる小さな言葉。
見つからない欠片を必死に探して。

「しくし、く、しんしく。」

雑木林の奥も過ぎ、
雑木林の底まで流れて少年は、
呪でもあろうかその言葉を
一層早くに、一層大きくへ。

「しくし、く、しんしく。」
「しくし、く、しんしく。」

見つからぬ破片を視線で探す。
地面を見て、
草の隙間を見て、
木の枝の先、
木の葉の影。
見えない空の横、
隠された緑。
潰れた蟲の死骸の上、
キンキン冷たい夜の空気。
大きなざわめきの中に
隠された音まで。
見つからない欠片を探して歩き続ける少年。

「しくし、く、しんしく。」

視線を感じることだろう。
背中に刺さる強すぎた視線を。
痛すぎた視線を。
けれど少年は進んでいくのか。
落としてしまった欠片を探して。

小さすぎる事ではないか、
無数に発生する人間の中で。
無意味すぎる事ではないのか、
人生と呼ばれる数え切れない答えの、たった、
たった僅かな1つ。

けれど少年は進んでいくのか。
落としてしまった欠片を探して。
落ちているかも解らない欠片を探して。
一人、今も先を見つめているのか。
一人、誰もいない世界を進み続けるのか。

私には解らない。
少年の澄んでいるだろうその瞳が。
私には解らない。
ただ前だけを見つめ、いつも歩いていくだろうその何かが。
私には解りたくもない。
少年の答えなど。

もし答えを知る人よ。
人でなければ生物だろうか、物だろうか、存在すら無い者だろうか。
教えて欲しい、少年の答えを。
その欠片は落ちているのだろうか。
少年を待っているのだろうか。
少年は見つけるのだろうか。
もし答えを知る者よ。
その欠片が在るというのなら、
私の存在はもう消えてしまうではないか。
私の残してきた存在は、
ゴミのように消えてしまうではないか。
私の存在は、
いったい何だというのだろうか。


半月。
光がかすかに届く雑然の中。
窓際に座りぼんやり座り。

「しくし、く、しんしく。」

少年の言葉。
口ずさんでぼんやり。
少年は笑っていたのだろうかと考えたりした。


*

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2002.10.26

s-アゲハ



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